ガロア理論入門 E. Artin (訳: 寺田文行)

原書では…

 

10. アーベル群のその応用*1 (63ページ)

定理 26. 体の乗法群の任意の有限部分群 S巡回群である.

補題 1. 1つのアーベル群の元 AB の位数をそれぞれ ab とし,cab の最小公倍数とすると,この群の中には位数 c の要素が存在する.*2

証明 (略)

補題 2. 1つのアーベル群で,最大の位数 c を持つ元 C が存在するならば(有限群はつねにこの条件を満たす),c はこの群の任意の元 A の位数 a で割り切れる.よってこの任意の元は,x^c = 1 を満たす.

証明 (略)

定理26の証明 S の位数*3n とし,S の要素のもつ位数の中で最大のものを r とする.すると S のすべての要素は x^r = 1 を満たす.次数 r のこの多項式は,体 K の中では根を r 個以上もち得ないので, r \ge n である.

定理26はまた,有限生成のアーベル群に関する基底定理を用いても証明することができる.そのための用語の定義を以下にあげる.

定義 生成 G をアーベル群とし,群演算を加法で書き表わすとする.G の要素 g_1,g_2,\cdots,g_k が群 G を生成するとは,G の任意の要素 g が g_i の倍数の和として,

g = {n_1}{g_1} + {n_2}{g_2} + \cdots + {n_k}{g_k}

の形に

基底定理 有限生成のアーベル群は,k をその極小な生成系の要素の個数として,巡回部分群 G_1,G_2,\cdots,G_k の直積である.ただし,i = 1,2,\cdots,k - 1 のとき G_i の位数は G_{i+1} の位数の約数である.

証明 (極小な生成系の個数 k帰納法.)

  1. k = 1 の場合,この群は巡回群であり,定理は自明である.
  2. k - 1

 

*1:原書では "Finite Fields"

*2:寺田文行の訳を変更した.

*3:この『位数』は群の要素の個数.