代数方程式が解けることを「体」で表現すること

『今度こそわかるガロア理論』(p.147)

[定義] 根号表示

\mathbb{Q} を含む体 K 上の多項式

f(x) = a_{0}x^{n} +  a_{1}x^{n-1} + \cdots + a_{n-1}x + a_n \hspace{15pt} (a_i \in K)

の根 \alpha が(K 上で)根号表示されるとは,K の元と根号 \sqrt[r]{\ } と四則演算によって \alpha が表せるときにいう.そして Q 上の多項式 f(x) のすべての根が(\mathbb{Q} 上で)根号表示されるとき,f(x) は代数的に解けるという.(\mathbb{Q} の代わりに \mathbb{Q}(a_0, a_1, a_2, \cdots, a_n) 上で考える立場もある.)

根号表示されることの意味を別の形で述べてみよう.\mathbb{Q} を含む体 K の有限次拡大体 L (\subseteq \mathbb{C}) とその中間体の列

K = L_0 \subsetneq L_1 \subsetneq L_2 \subsetneq \cdots \subsetneq L_s = L

があって,各 i = 0, 1, \cdots, s-1 に対し

L_{i+1} = L_i(\sqrt[n_i]{a_i}) \  (a_i \in L_i)

となるとき,L は体 Kべき根による拡大体であるという.そして \alphaL の元であるとき,\alpha は(K 上で)根号表示されるという.

 『ガロワと方程式』(p.141)

さて,べき根とは x^n = a の解のことをいいます.\alpha_0 = \sqrt[n]{a} = a^{1/n} を一つの解とし,

\hspace{30pt}\omega_n = cos(2\pi/n) + i sin(2\pi/n)

とすると,f(x) = x^n - a = 0 のすべての解は

\hspace{30pt}\alpha_k = \omega_n^k\alpha_0 \hspace{15pt} (k = 0, 1, \cdots, n-1)

で表されます.

(p.150)

べき根で解けるということは,基礎の体 F に対して,f(x) の分解体 K が,F から始まるベキ根拡大体の系列,すなわち

F = F_0 \subset F_1 \subset F_2 \subset \cdots \subset F_k \  (6.32)

で,F_{i+1}F_iベキ根拡大体になっているような系列があって,K \subset F_k であればよいことがわかります.

重根をもたない \mathbb{Q} 係数の n 次方程式 f(x) の根を \alpha_1, \cdots, \alpha_n としたとき,\mathbb{Q}\alpha_1, \cdots, \alpha_n を添加してできる体 K (= f(x) の分解体)がベキ根拡大体になっていれば,その方程式は,べき根で解ける,ということ.

では,方程式がべき根で解けるためには,どのような条件を満たしているかを判定することが必要となる.そのためには Kガロア群を調べればよいというのが,“方程式のガロア理論”で,

方程式の分解体がベキ根拡大体 \Longleftrightarrow ガロア群は可解群

となる.\Longrightarrow の対偶は,

ガロア群が可解群でない \Longrightarrow 方程式の分解体はベキ根拡大体でない

となって,一般の n 次(n \ge 5)以上の方程式のガロア群は,n 次対称群 S_n(と同型)で,それは可解群ではないので,その方程式の分解体は,ベキ根拡大体ではない,となって,分解体の元は根号表示できない,すなわち,有理数に四則演算とベキ開を作用させて得ることができないということになる.