本質を学ぶ ガロワ理論最短コース

184ページ(第10章 べき根と方程式の解)

定理 10.4 (べき根の 式で表される根を持つ多項式の特徴づけ)

重根を持たない多項式 f(x) に対して,次は同値である.

  1. f(x) の根がすべてべき根の式で表される.
  2. 多項式 f(x) の群は可解である.

 『天才ガロアの発想力』では、「2.」\Rightarrow「1.」をボカして書いてあったと思う。

で、5次方程式のガロアS_5正規部分群は、S_5A_5\{e\} しかないから、5次方程式の根はべき根の式で表すことができない(アーベル-ルフィニの定理)というところにたどり着く。

5次方程式の解の公式がないことの別の証明は、

定理 10.5 (素数次可解既約多項式の特徴づけ(ガロワ))

素数次既約多項式 f(x) に対して,次は同値である.

  1. f(x) の根はべき根の式で表される.
  2. f(x) の(任意の)2つの根に対して,f(x) のほかの根がすべて,この2つの根の式で表される.

 ここから

多項式がべき根の式で表される根を持つとき,その2つの根でほかの根が表されます.したがって多項式の群に含まれる根の入れ換えは,2個の根をどの根に入れ換えるかによって決まります.よって多項式の群は高々 5 \times 4 = 20個しか,根の入れ換えを含みません.ところが一般の5次方程式の群は S_5 なので(120個の入れ替えからなるので),ガロワの定理より,一般の5次式の根はべき根の式で表されません. 

 というふうに証明もできるそうです。

完全版 天才ガロアの発想力 (2)

(182ページ)

  • F: 体
  • K: Fの数を係数とする方程式の解から作った体
  • G: 体Kの体F上の自己同型の成す群(i.e.,Fの元は固定される)
  • H: Gの部分群

とする。

ガロアの定理:部分群と中間体の対応

  1. Hのすべての元で不変となるKの元の集合は、FKの中間体を作る。
  2. Gの元のうち、体Fと体Kの中間体Mの数すべてを不変にする自己同型は、群Gの部分群となる。

 

固定体:上記 1. で、体Kの体F上の自己同型を成す群Gの部分群Hの元で不変になるKの元の作るKFの中間体を「部分群Hの固定体」と呼び、K(H) と書く。

    K(H) = \{x \in K|\forall h \in H, h(x) = x\}

 

固定群:上記 2. で、体Fと体Kの間にある中間体Mの元のすべてを不変にする群Gの自己同型の作る集合を「中間体Mの固定群」と呼び、G(M) と書く。 

    G(M) = \{g \in G|\forall x \in M, g(x) = x\}

 

ガロアの定理:部分群と中間体のハッセ図の一致

Gの部分群のハッセ図と体Fと体Kの中間体のハッセ図は、系図として完全に一致し、集合の包含関係は逆になる。

 

ガロアの定理:ガロア理論の基本定理1

F と体K の中間体M の固定群 G(M) で固定されるのは M の数のみである。i.e., K(G(M)) = M。また逆に、部分群Hの固定体に対する固定群はH 自身である。i.e., G(K(H)) = H

 ある数x が中間体M の元であることを調べるには、M の固定群H (=G(M)) のすべての自己同型でx が不変であれば、x \in M がいえる。

  • f_M: 群Gの自己同型fM の数だけを入力するように制限したもの

とする。

このとき、f \in H \Rightarrow f_M = ``Mの恒等写像 (e_M)'' が成り立つ。...

ガロアの定理:ガロア理論の基本定理2

  1. G に属する自己同型を体 K(H) に制限して作用させたものがすべて体K(H)F 上の自己同型となるのはHG正規部分群であるときであり、その場合に限る。
  2. G の部分群HG正規部分群であるときは、固定体 K(H)F上の自己同型の成す群は、群G正規部分群Hによる右剰余類の成す群と同型になる。

つまり 1. は、H \triangleleft G, f \in G \Leftrightarrow f_{K(H)} \in G(K(H))

2. は、H \triangleleft G \Rightarrow \{f_{K(H)} \in G(K(H))\} \cong G/H

1. の証明

f \in GM = K(H) とし、M' = f_M(M)H' = fHf^{-1} とする。(H'Hf による共役な群。)

M' = K(H') を示す。

(続く)

 

完全版 天才ガロアの発想力

ガロアの定理の証明:超ざっくり版(176ページ)

与えられた方程式に解の公式が存在するかどうか(四則計算とべき根ですべての解を求めることができるかどうかは、次のように表現できる。

有理数\mathbb{Q} からスタートして、べき根を加えて体を拡大することを繰り返して、いずれすべての解を含む体 K に到達するなら、四則とべき根で解けることになります。*1

体Kのガロア系列有理数\mathbb{Q} からスタートして四則計算とべき根で拡大する体の列で、最後にすべての解を含む体 K に到達するもの。

 つまり、ガロア系列が存在すれば四則とべき根で解けるし、ガロア系列存在しなければ四則とべき根で解けないということである*2

方程式のガロア*3: 方程式の解をすべて含んだ体の自己同型のなす群のこと。

My note:

  • 方程式のすべての解を含む体 K のガロア群を求め(そのガロア群 G の部分群たちは K と \mathbb{Q} の中間体と 1-1 対応する)、群 G から G の自明な群 \{e\} に至るある条件を満たす正規部分群の「ガロア系列」ができるとき、方程式は解を持つというのが、この先の展開?
  • ガロア系列の正規部分群に対応する中間体は、その部分群に含まれるそれ自身ではないもっとも大きい正規部分群に対応する中間体にべき根を加えて拡大した中間体になっていることはどうやってわかるのか?

*1:この主張の根拠が腑に落ちない。それほど明らかなことなのか?

*2:べき根を加えて体を拡大していく場合、5次以上の方程式だと解を含む体ができないと思うので、ガロア系列がある/ないの議論ができないのではないか?

*3:この本には「ガロア群」という言葉は使われていない

三月朔日

旧暦では、今日から三月。

今日は、風も穏やかで暖かな午前中だったが、その後、雲が広がり、うす曇りとなった。

午前中は、もらった招待状で、『ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト』(名古屋市美術館)。初期の作品より、後期の作品の方が馴染みがある感じ。レコード・ジャケットにもいくつか使われていたようで、どこかで見ていたかもしれない。

  • 夕食:塩麹につけた鮭をグリルで焼いたやつ、けんちん汁(大根、にんじん、ごぼう、コンニャク、油揚げ、刻みネギ)、絹さやの卵とじ、さつまいものマッシュ、納豆、小松菜のおひたし塩麹がけ