ガロワと方程式

6.1 ガロワ拡大とガロワ群

[定義 6.1] ガロワ拡大体

F の分離拡大体 KF 上のすべての共役体が一致しているとき,この共通の体 K を,Fガロワ拡大(体)であるという.

 

補足

  • 「体 F の分離拡大体 K」:K は,その任意の元が F 上分離的(元が重根を持たない最小多項式の根である.
  • [定理 4.15] (p.107)「KF の分離拡大であれば,単拡大である.すなわち,K = F(t) となる t \in F が存在する」により,ある \alpha \in F があって,K = F(\alpha) で,\alphaF 上の共役数を \alpha_1 = \alpha, \alpha_2, \cdots, \alpha_n としたとき,KF のガロワ拡大であるとは,以下が成り立つこと.

K = F(\alpha) = F(\alpha_2) = \cdots = F(\alpha_n)

  • K = F(\alpha) なら,[定理 4.3] (p.87)「aFn 次の代数的数であれば,F(a) の任意の元は,すべて an-1 次の多項式として一意的に表せる」と [定理 4.6] (p.92)「F 上代数的な a,b に対して,a+b,a-b,ab,a/bF 上代数的である」から,K の任意の元は,F 上代数的,すなわち分離的である.
  • \alphaF 上の最小多項式f(x) としたとき,Kf(x) のすべての根を含んでいる,すなわち,Kf(x) は1次多項式の積に分解するので,Kf(x) の分解体であるというのと同義.
  • KF 上の同型はすべて KK に写すので,KF 上のガロワ拡大であれば,K の自己同型になる.

 

[定義 6.2] ガロワ群

K が体 F のガロワ拡大であるとき,KF 上の自己同型(F の元を不動にする自己同型 (p.112))のなす群を,KF 上のガロワ群といい,Gal(K/F) と記す.(※ Gal (K/F) は,K の自己同型群 Aut(K) の部分群である.)